2016年12月10日土曜日

『このマンガがすごい!2017』の結果に思うこと

今年も『このマンガがすごい!』本誌が発売されました。
オトコ編1位は『中間管理録トネガワ』、オンナ編1位は『金の国 水の国』です。
例年同様、オトコ編1位の巻頭インタビュー、レビュー(『兎が二匹』)や特集記事を担当し、アンケートでの投票に参加しました。

とにかく今年のオトコ編の印象は、「本命不在」の一語に尽きます。
ちょっとそのあたりの事情について。

『このマンガがすごい!』の投票レギュレーションは、「前年10月1日から今年9月30日までの期間に単行本が発売された作品」であること。これは毎年同じです。
「すごい!」と思ったのであれば、『ONE PIECE』や『こち亀』に投票しても構わないのですが、『このマンガがすごい!』は毎年刊行される年度版である点が投票者の心理に影響を及ぼします。
その結果として、
・期間内に1巻が出た新作
・期間内に完結した作品
のいずれかがランキング上位に浮上しやすい傾向にあります。
過去の例でいえば、前者は『進撃の巨人』(11年1位)や『ダンジョン飯』(16年1位)、後者は『ちーちゃんはちょっと足りない』(15年オンナ編1位)や『黒博物館 ゴースト アンド レディ』(16年3位)が挙げられます。

前者は青田買い的な意味もありますが、とかくマンガ業界は「(単行本が)売れないと続きが出せない(≒打ち切られてしまう)」ので、どうにか多くの人に注目してもらって「作者と読者が納得する形で最後まで完走してもらいたい」という願いが込められた投票行動だと考えられます。今年のランキングでは、1位、2位、3位、5位の作品がこれに該当します。
一方の後者は、投票できる最後のタイミングであり、「この名作が世にあまり知られることなく埋もれてしまうのは惜しい」という、使命感のようなものが込められているのでしょう。今年のランキングでは4位の作品がこれに該当します。なお、現在、映画が公開中の『この世界の片隅に』も、最終3巻が2010年のオトコ編で11位に入っていました。
投票方式と年度版というレギュレーションによって、アンケート回答者には上記のような内的動機が介在するのが、『このマンガがすごい!』本誌の傾向です。
すでに評価の定まった作品は敬遠されがちなのです。
いうなれば「応援馬券」ですね。

そして今年に関しては、マンガ好きのあいだで支持されたのは、前年と同様に『ダンジョン飯』と『ゴールデンカムイ』だったような印象を受けていました。どちらも「このマンガがすごい!WEB」の月間ランキングで1位を取ったことが、その証左といえるでしょう。
しかし、『ダンジョン飯』は前年に1位、『ゴールデンカムイ』はマンガ大賞を受賞しており、「すでに評価の定まった作品」と判断されたとしてもおかしくありません。
ゆえに今年のオトコ編は「本命不在」であったと考えられます。
この状況だと、何が1位になっても不思議ではない半面、何が1位になっても不満に思う人はいるかもしれません。

事実、今年のオトコ編の各作品の獲得ポイント数を見れば、上位はほとんど差がないことがわかるはずです。
では、そのわずかな差を分けた要因とはなんでしょう。

『このマンガがすごい!』の投票アンケートは1~5位までを任意に選ぶもの。1位は10ポイント、2位は9ポイント、3位は8ポイント、4位は7ポイント、5位は6ポイントとし、それとは別にもう一方のカテゴリ(オトコ編とオンナ編)から1作品選べます(5ポイント)
その集計の結果がランキングとして反映されるわけですが、アンケート回答者が何に投じたのかは、すべて誌面に掲載されています。
これを見ていくと、じつは『トネガワ』を1位に推している回答者は、あまり多くはいません
そしてここ数年は、書店からの票がランキングに大きな影響を及ぼしていましたが、こちらでも1位は獲得できず(1位は『私の少年』56ポイント、『トネガワ』は3位で32ポイント)。

つまり「個人的な1位は別にあるけど、面白かったから3~5位に入れた」との投票行動の集積結果が、「本命不在」の状況とあいまって、『トネガワ』1位に結びついたと考えられます。こういうことがあるのも、アンケート集計によるランキングならでは、でしょうね。
そこから予想できる読者の反応としては、「面白いは面白いけど、まさか1位になるとは……」といった驚き(や反発)ではないでしょうか。

そもそも『このマンガがすごい!』は、権威のある賞ではなく、ただの集計結果にすぎないと思っています。よく勘違いされますが、『このマンガがすごい!』の1位は「大賞」ではありません。あくまで「集計結果の1位」なんですね。1位以外の作品についても、みんなでワイワイと話すことができればいいんじゃないかな、と個人的には思っています。
まあ、『トネガワ』は、「このマンガ大賞」は選ばないように思うので……。
あちらは8巻まで刊行されている作品が対象となるので、「このマンガがすごい!」ほど青田買いの傾向は強くない印象を受けます。
年末は「このマンガがすごい!」、年度末は「マンガ大賞」と、お互いに住み分けて、どちらも盛り上がればいいなと思っています。
『トネガワ』はインパクトがあるからバズられがちですが、オンナ編1位の『金の国 水の国』も良作なので、オススメですよ。

このマンガがすごい! 2017
このマンガがすごい! 2017
posted with amazlet at 16.12.09

宝島社
売り上げランキング: 189
中間管理録トネガワ(4) (ヤンマガKCスペシャル)
福本 伸行 三好 智樹 橋本 智広
講談社 (2016-12-06)
売り上げランキング: 35

0 件のコメント:

コメントを投稿